格好のつかない黒羽くんは今日もにぶい。




「奥西さん,俺と付き合ってください。俺は泣かせないように,ずっと笑ってて貰えるようにするから。好きな人なんて忘れて,俺の近くにいて」



私は失ったはずの恋心を,すぐそばまで引き寄せていた。

何を言ってるんだろう,月くんは。

現在進行形で私を苦しめるのは,月くんなのに。

好きな人って,誰のことだったっけ。



「彼女と友達って,違うんだよ,つきくん……そんな繋ぎみたいに,誰でも誘っていい訳じゃないんだよ。分かってるの?」



戻れなくなるよ。

だって



「分かってるよ。俺だってそれくらい。1番大事にしたい好きな人のことでしょ?」



色んな可能性を,きっと月くんより分かっていながら。



「私が彼女で,いいの?」



その手を私は取ってしまうから。



「うん。奥西さんこそ,彼氏が俺でいい? 自慢できないよ」



今みたいに,他の子へやっぱ違うって言われる日が来るかもしれない。

私へのは恋じゃなくて,雪乃さんのが正しかったのかもしれない。

まだ誰のことも好きじゃないのかもしれない。

そんなの,知らない。



「私が,ずっと好きだったのは……月くんのこと,だよ」