格好のつかない黒羽くんは今日もにぶい。




「……月くん。失恋すれば悲しいって気持ちは,分かるんだよね……?」

「うーん。俺は別に。悲しいって言うより,寂しい,かも。あー連れてかれたーって」

「悔しい?」

「うん……? どうだろ。雪乃ちゃん嬉しそうだったから,良かったね~って思った」



なに,それ。

恋にも色んな形がある。

だけど,とはいえ。

月くんの言葉はどこか他人事で,私の知る恋とは少し性質が違うように感じた。



「ゆき,のさんに……来年も逢いたいって思う? 手を繋ぎたいとか思う? 雪乃さんとだったらキス出来るって……したいって思う?」

「キッ……? いや,えー。手繋ぐとかはいいなーって思うけど……そういうのは想像できない」

「私は,出来るよ。好きな人となら,実際はどうあれ,想像くらい簡単に出来る。それが私の恋。教室の女の子達とは違う。共有できない気持ちだよ」



誰か一人のものになるのが嫌。

その気持ちは似ているようで,違う。

教室の子達は,そもそも皆のものっていう認識が根底にあって。

私のは,誰のでもない人が誰かのものになるのが嫌って感情。

皆のは,見ていたい追いかけていたい。

私のは,近くにいたい振り向いて貰いたい。

ほらね,こんなにも違う。