「キャラクターの入れ替わりが激しいアニメで,一瞬しか出ないキャラなんてあげるからだよ。あと知ったかするからだね」



どんまい,と。

私はさらりと告げる。

雪乃さんの挙げたキャラもあまり目立つキャラではないけれど,好きなアニメなら人気の高いキャラクターくらい憶えておきなよと思った。

折角珍しくも話の合いそうな展開だったのに。



「よく知ってるね! もしかして,奥西さんも見てる?」

『……おい月~,奥西さんがそんなもん見てるわけねぇだろ!!!!』



冗談もほどほどにしておけと,私への問いに外野から男子が一人がはがはと笑う。

私はすっと無表情を向けて,また戻した。

ただ次の返答に困っただけだったのに,そのクラスメートはびくりと肩を震わせて,恥じるように顔をそらしたからだった。



「夕飯前の時間でしょ? ……弟が見てるの」

「そうなんだ!!」



弟が見てる,なんて。

ほんとは嘘。

月くんはきっと憶えてもいないけど,好きだって前に言っていたから。

見てみようかなって見始めて,何だかんだ面白くて。

毎週リアルタイムで私が見ていた。

その弟とやらが代われと喚くのを押し退けて。



「……私も,さっき月くんが言ってたキャラ,悪くないと思う」



好きとまでは恥ずかしくて打ち明けられなかったけれど。

好きな女の子にキャラの話で戸惑われてしまったのが少し可哀想で,私はぼそりと呟くように言う。



「……だよね!!!」



驚いたあと,きらきらと輝きだしたその瞳に,私は人知れずほっとした。

そっちの方が,月くんはずっといい。