呼吸まで止めたまま,私は目線をドアに向けた。

その向こうが見えるわけでもないのに,注視してしまう。

その声は確かに私の知る雪乃さんの物で,内容はまったく想像もしていなかった事。

うそ,と息を殺している内に,一緒にはしゃいでいた別の誰かが言った。



「え,でも雪乃……黒羽くんは?」

「あー確かに~! あれ100雪乃loveじゃん。いいのー??」

「え……月くん? 月くんそんなんじゃないよ,多分。それに月くんは私に優しすぎるから,付き合ったりとかはちょっと……や,でも,友達としてはすっごくいい人だと思うよ?!?」

「えーうそーん。黒羽くんかわいそー!
雪乃も悪い女だね~。絶対好かれてるのに! あははっでもそうだよね。顔はめちゃいいけど,付き合うってなるとちょっとね」

「ひどくないよー!! それに私そこまで言ってないでしょ!! 私は違うかなって言ってるだけなんだから!! 月くんいい人だよ!」



用事が終わったのか,段々と声が遠くなっていく。

私は呼吸をようやく1つ置いた。

だから,言ったじゃん……