風がそよりと通るお昼。

私は頬杖を付き,窓の外を眺めていた。

正反対の廊下側へと元気に向かう,私の好きな人は



「あー! 俺もそれ好き! ⚪⚪が格好いいよね!」

「……ごめん,私,そのキャラはあんまり憶えてないかな」

「あ,そっか,ごめん。誰が好きなの?」

「⚪⚪くん」

「……。……? あー,あいつね,うん,いいよね,かっこよくて!」

「どっちかっていったら……可愛い?」

「「……」」


いつも格好のつかない,他に好きな人のいる残念なあの人。

外を眺めたふりをしながら,耳はいつも向こうに行ってしまう。

会話が続かなくなり,しょぼんと私によってくる黒羽 月(くろば  つき)というクラスメート。

月くんの好きな相手,雪乃さんは,もうその場にいた友達と新しく話題を広げていた。

ころころと鈴の音が鳴るような笑い声や,控えめな性格で聞き上手に精一杯笑顔を浮かべる雪乃さんは,傍目で見ても天使のよう。

ボブの髪をさらりと揺らすだけで他人をときめかせることが出来るのはきっと,雪乃さんくらいだと思う。



「奥西さ~ん。どうしよう,失敗した~」



慰められに私に泣きつく月くんは,ほんとに変わってる。

私はその声を聞いて初めて,そちらへ顔を向けた。