「かき氷ください。えっと……」
彼と付き合っていた頃と同じ浴衣姿に身を包み、同じ屋台に顔を出した。
かき氷、何個買おう。
スプーンは、いくつもらおうか。
……いや。
「今日は、私一人だった」
買う個数も。
スプーンの数も。
お金をどちらが払うかのジャンケン勝負も。
どちらが多く食べたかの、小さな言い合いも。
そして、彼自身も――
これから先、
私の隣で見ることのない物ばかり。
「水に流したいのに、カチコチだ……」
胸の中にある思い出が、凍っている。
そのせいか。
私の心は、いつまでも冷たいまま。
「……あれ?ブドウ味のシロップ?」
店の台の上に、色んな味のシロップがある。
そこに、珍しい「ブドウ味」を見つけた。