〇冒頭・前話回想
波留に迫られて、緊張からギュッと強く目をつむってしまう司。
波留はキスするつもりだったけれど、怯え気味の司に配慮してホッペにチューに変更。
唇スレスレの場所に波留のキスが。

〇司の部屋・夢から覚める司
司「う、うわあぁぁ」
ベッドからずり落ちる。
司(夢? いや、夢じゃないんだった)(でも別に!ほっぺにチューくらいなら昔も……)
波留はスキンシップに抵抗がないタイプでハグとかほっぺにキスくらいはしょっちゅうだったことを思い出す。
司は波留にキスされた唇の端に手を当てる。
司(でも、これまでのとは違ったかも……)(あと数ミリで唇だし)
ふと目覚まし時計に目をやれば、いつもより三十分遅い。
司(波留の朝ごはん!)
慌てて準備をしてお隣の部屋へ。

〇波留宅
きちんと自分でトーストを焼いて朝ごはんを食べている波留。
司「ご、ごめん。寝坊しちゃって……」
司(ゆうべは全然寝つけなくて、おまけにあんな夢まで見るし)
パニック状態の司に波留はにこりと大人っぽい笑みを見せる。
波留「司のぶんもあるよ。どうぞ」
トーストを差し出す波留。
司「あ、ありがと」
司は向かいに腰かける。急に男っぽくなった波留に戸惑いを隠せない。
そんな司を見てクスリとする波留。
波留「司が寝坊なんて珍しいね」
司「ん。逆に波留はひとりで起きられたんだ? 低血圧なのに」
いつもは司が強引に起こしている。布団から出ない波留の回想コマ。
波留「……起きたけどさ」
波留は首を横に向ける。見れば、後ろの髪に盛大な寝癖がついている。
波留「これ、どうすればいいの?」「そのまま学校行っていい?」※いつものかわいい雰囲気に戻る
司(あ、いつもの波留だ)
司はホッとする。
司「食べたら、直してあげるから」
波留「お願い~」
波留は司をそっと盗み見て、心のなかで(まぁ、ちょっとずつね。攻めすぎると逃げられそうだし)と策を練っている。

〇玄関前
靴を履き終えた波留が背筋を伸ばす。
司(やっぱ、背伸びたんだな)
波留「そういえば、なんで寝坊したの?」
司「え?」
波留は小悪魔な笑みで、顔を近づけてささやく
波留「眠れない理由でもあった?」
司「な、な、なにも!」
油断も隙もない感じで男の顔を見せてくる波留に翻弄される司。
司(わ、私の知ってる波留じゃない~!)

〇教室
学級委員長「ということで、秋旅行の班決めをします。6人組、適当に作って~」
司は胡桃、波留、つっちーと集まる。
司「日帰りで遊園地だっけ? 去年のお城見学のほうが私は好きだったな」
胡桃「司、趣味渋いもんね~」
つっちー「俺は山でキャンプとかがよかった!波留は?」
波留「司と一緒ならどこでも」※この男子二人の会話は司と胡桃は聞いていないイメージで
胡桃「さて、あとふたり誰を誘おうか?」
ゆいちゃん「ねぇねぇ、混ぜて!」
 ※ゆいちゃん 小柄でかわいい女の子。司とも仲良し。
胡桃「オッケー。女子三人だから、もうひとりは男子がいいかな~」
司もクラスを見渡す。夏休み明けに転入してきた桂くんが戸惑っている様子。
 ※桂くん 背が高い・眼鏡で髪長くて野暮ったい雰囲気(実はイケメン)
司「桂くん。こっち、人数足りなくて困ってるんだ。よかったら入ってくれない?」
桂くんはホッとした顔。
桂「ありがとう。俺、影薄いから誰にも誘ってもらえないかと思った」
桂くんは冗談っぽく笑うけど、少し寂しそう。
司「全然薄くないよ。図書委員で本に詳しい、英語の発音が綺麗、掃除の時間に誰よりもきちんと掃除してる」「ほら、いっぱい印象ある」
柔らかな笑みを浮かべる司に、驚いたように目を瞬く桂くん。
クラスの女子「司王子、優しい!」「いつでもイケメン~」
司の気遣いにときめく女子たち。
女子に囲まれている司を眺める波留。
波留「また無意味に女子を誘惑してる……」
波留の隣に座ろうとした桂くんがそのつぶやきに反応する。
桂くん「いや、男でもときめいたけど」
桂くんは司を見て目を細める。
桂くん「美人なだけでなく優しい子なんだね。人気者なのもうなずけるなぁ」※無邪気な感じ。
司は気づいてないけれど、つっちーと胡桃は桂の発言を聞いていてびっくり顔。
波留(なんで気づくんだよ。司が美人なのは、俺だけが知っていればよかったのに)
唇をとがらせ、ドス黒いオーラを漂わせる波留。
波留を引っ張って隅に連れていくつっちー。
つっちー「怖いから、その顔」
波留(やっぱ、少しずつなんて言ってる場合じゃないな。さっさと俺のものだってアピールしないと)
波留「悪い虫がつく前に」
つっちー「桂、めっちゃ誠実そうじゃん。どこも悪くなさそうだけど」
波留「司に近づく男はぜんぶ悪い虫!」

〇放課後・教室
胡桃「今日は女子会だから。じゃあね~」
波留「じゃあ俺も参加だね」
無邪気についてくる波留をベリっと引きはがし、司と教室を出る胡桃。
司「波留、来ちゃダメなの?」
胡桃「今日はふたりがいいの」

〇ショッピングセンター
雑貨屋でペンケースやスマホケースを見る司。
司(あの指輪のお礼としたら安物すぎ? でも気持ちの問題だし)
悩む司に近づく胡桃
胡桃「かわいいものばっかり見てる。司の趣味とは違うから……波留に?」
うなずく司。
胡桃「なにプレゼント? 波留の誕生日はもっとあとだよね?」
司「じ、実は……聞いてくれる?」
胡桃「もちろん。そのための『ふたりきり』だもん」「今日の司、すっごく変」

〇カフェに移動
おいしそうなフルーツパフェがテーブルに。
波留との出来事を打ち明ける司。
司「全然わからないんだ。今まで守ってあげなきゃと思ってた波留が急に豹変して、普通の男の子みたいになっちゃってさ」
胡桃(司、モテるくせに鈍いからなぁ。波留も大変ね)
胡桃「波留も普通の男の子だよ。それはわかってあげてよ」
司(波留は男の子で……それで、私のことが……?)
司「わぁ!」
恥ずかしくてテーブルに顔を突っ伏す司。顔も真っ赤。
胡桃はクスクス笑って聞く。
胡桃「でも、司は指輪のお礼を贈ろうとしてたんだよね? 指輪なんて重~いプレゼント、嫌だから返すとかそういう発想には至らなかったワケ?」
司「う……」
司(あの生活力皆無の波留がバイトまでして買ってくれたものを返すなんて……)
傷つく波留の顔を想像して頭をブンブン振る司。
胡桃「波留が一番喜ぶお礼はさ、司がかわいい服でも着て指輪をつけてあげることだと思うよ」※ニヤニヤした顔で
司「かわいい服……は絶対に似合わないよ」
胡桃「そんなことないって。桂くんじゃないけど最近の司、どんどん綺麗になってるもん」
司「桂くん?」
胡桃「あ、なんでもな~い。とにかく、イケメンで美人なんて最強だから。自信もってかわいい服着よう!」
司「胡桃、私に女装させて楽しもうとしてるだけでしょ」
胡桃「え~そんなことは~」


〇司自宅・鏡の前
紺のロング丈のワンピースを着た司。
胡桃と店員さんに強引に押し切られた場面の回想。
司(やっぱり、女装してる感がぬぐえないような……)
司はそっと波留にもらった指輪の箱を開ける。
華奢でキラキラした指輪。
司(かわいい指輪。私より波留のほうがずっと似合いそう)(けど、波留はこれを私にって思ってくれたんだよね)
薬指につけて鏡を見る。やけにドキドキして顔が赤くなる。
司(私、こんな女の子みたいな顔してたっけ?)