〇朝・鏡の前で髪を整える司
鏡に映るイケメンな司の顔。
司モノ『私は今日、17歳になった』『身長はもうひと息で170センチに届きそう。制服のスカートは似合わなくなる一方だ』

〇教室・司と胡桃
大きな紙袋にもらった誕生日プレゼントを入れて運ぶ司。
胡桃「おぉ~。今年もすごいね」「さっすが王子」
司は苦笑する。
司(女の子にモテるのも、王子って呼ばれるのも嫌なわけじゃない)
司は生まれつきのナイト気質で誰かに頼られるのはうれしいと感じる。
凝ったラッピングのほどこされたプレゼントに目を細める司
司「かわいいなぁ。みんな女子力高い」
司(でも少しだけ……守られる側のお姫さまになってみたい気持ちもあったり)
後輩女子「つ、司先輩! お誕生日おめでとうございます。お菓子作ってきたので、よ、よかったら!」※本気告白っぽい雰囲気の女の子
司はサッと王子の顔に戻って、プレゼントを受け取る
司「ありがとう。すごくおいしそう」
司と後輩のやり取りを眺める胡桃
胡桃「全力で期待に応えちゃう……優しすぎるのよね、司は」

〇部活後の道場・夕方
みんな「お疲れさまでした~」
あいさつが終わると一瞬でみんなに囲まれる司。またたくさんのプレゼントをもらう。
司(うれしいけど、さすがにちょっと重いかも)
そこに現れる波留。
厳しい部長「こら。部員以外は道場内へは……」
 ※部長 ひとつ先輩。キリッとしたポニーテールの委員長キャラ。
波留の許してのポーズに「うっ」と言い返せなくなる部長。
波留「司! 半分持つ」
そう言って司が両手に持っている紙袋をひとつ奪う波留。
波留「でも俺は非力だから小さいほうね~」
女子「波留先輩、かっわいい!」
波留「でしょ~」
司の後輩とたわむれている波留。
司は自分に残された大きな袋と波留の奪った小さい袋を見比べる。
司(小さいけど、あっちのが重いのに)
並んで帰っていく司と波留を見送る剣道部員たち
後輩たち「うちの学園の王子と姫! お似合いすぎる~」
部長「……そうね」※波留に恋する部長は複雑な顔

〇駐輪場
いつもはバス通学だけど今日は波留の寝坊により自転車で通学した。
自分の自転車の前にかがみ込む司。
司「あ~やっぱり。パンクしちゃってる」「朝から漕ぎにくいなって思ってたんだよね」
波留「とりあえず俺ので帰ればよくない?」
司「う~ん。じゃあそうさせてもらう」
当然のように前に行く司を制して波留は「いやいや、俺が漕ぐから」と。
司「無理だよ。私、女子にしてはデカいし重いから」
呆れた顔で笑う波留。
波留「まだ気づいてないの? もう、身長も体重も俺のほうがあるよ」
男らしくなっている波留の腕にドキリとする司。
波留はなんなく自転車を漕いで走り出す。
風を切って、海辺の道を走り抜ける自転車。
司(背中も広くなってる。男の子……なんだなぁ)
波留「ちょっと寄り道していーい?」
司「いいけど。どこ行くの?」
波留「いいところ」※小悪魔っぽい笑み

〇小高い丘にある公園
波留「ここね、球場であがる花火が見えるんだって。つっちーが教えてくれた」「司、花火好きでしょ?」
司「うん! もしかして誕生日プレゼント? ありがと」
波留「花火以外にもあるけどね」
ふたりは街を一望できる展望台へと歩く。
司は柵に手をかけて身を乗り出すようにして景色を見る。
司「わ~懐かしい! ここ、小学生のときに遠足で来たよね」
波留「あ、そうかも。俺がはしゃぎすぎて熱出して」
司「そうそう。茜さんは会議中で迎えに来れなくて波留、大泣きしたよね」
大泣きする波留を心配してオロオロする司(小学生時代)
波留はとびきりの笑顔を見せる
波留「あのとき、司がずっとそばにいてくれて……」
波留は自分が恋に落ちた瞬間を思い出す。

〇波留の回想
小学生のふたり。
熱に浮かされている波留に司が言ってくれる。
司「波留が寂しいときは、いつも一緒にいる」「だからもう寂しくないよ」
ギュッとつながれた小さなふたりの手

〇現在に戻る
波留「一生、司を離さないって決めたんだ」※まっすぐに司を見て
司の心臓がドキドキしはじめる。
司(あれ。私、なんでドキドキして……?)
波留はポケットから小さな箱を出して司の手にのせる。
波留「はい。十七歳、おめでとう」
司「プレゼント?」
開けてみると、お高いブランドの指輪で驚く司。
司「これ、すっごい人気で、でも高いやつだよね? え、えぇ⁉」※困惑
ハッとする司。
司「まさか、ちょっと前に言ってたバイトって……」
回想シーン。
バイトを始めたという波留を心配する司。
司(波留にバイトなんてできるの? 生活力皆無なのに??)
飲食店でバイトする波留を見守る司。
波留「だって長く身につけてほしいし。これからどんどん綺麗になってく司に似合う指輪でなくちゃって奮発したんだ」
波留は甘くほほ笑む。
波留「で、これからまたバイトがんばって十年後には婚約指輪を贈るから」
たじろく司。
司「いやいや。私たち、付き合ってるわけでもないし……なにその重い計画」
波留「え? 司は今日から俺の彼女でしょ」
キョトンとする波留にますます困惑する司。
波留はギュッと司の手を握る。
波留「約束したじゃん。俺の身長が司を追いこしたら彼女になってくれるって」「この前の身体測定、俺のほうが0.5センチ高かったからね」
司(や、約束?)

〇司の回想
中1。司には憧れている剣道部の先輩がいた。でも彼が陰で「古東はね~、どう見ても男じゃん。女の子に見えない」と自分を笑っているのを聞いてしまう。
思わず涙ぐむ司を一緒にいた波留がそっと抱きしめてくれる。※この時点では司のほうがかなり背が高い。
司「身長はどうしようもないけど、言動とか……もうちょっと女の子らしくしたほうがいいのかなぁ」
思わず波留に弱音を吐いてしまう司。
波留「司はそのままでいい」「待ってて。俺がめちゃくちゃ男らしくムキムキになるから。そしたら、隣にいる司はそのままで女の子らしく見えるよ」
司「波留がムキムキ?」
波留「そう。そしたら俺の彼女になってよね」※かわいい笑顔
司はクスリと笑う。
司(励ましてくれてるのかな? 波留がいてくれてよかった)
司「あはは、わかった。波留の身長が私をこえたら考えてみる」
波留「あ、こえると思ってない顔だ」
廊下に響くふたりの笑い声。

〇現在に戻る
司「え、約束ってあれ?」「か、彼女になるとは言ってない!」
波留「でも考える約束でしょ。ほら、考えてよ」
じりじりと距離を詰める波留。
司「だって波留はお姫さまで……私は波留のナイト……」
司(本当にそう? 守られていたのはどっちだった?)
さりげなく司を助けてくれる波留のシーンが次々に浮かぶ。
波留「今からお姫さまは司。俺がナイトになるから」
赤くなる司にふっと余裕の笑みを浮かべる波留。
波留「3秒あげる。どうしても嫌ならそう言って」「3、2、1」
カウントダウンとともに近づく波留の唇
司「ま、待って――」
キスの寸前で、画面切り替え。夜空に大きな花火が弾ける。