〇冒頭ヒキ・交差点・夕方
車通りの多い道を並んで歩いている制服姿の波留と司の後ろ姿(身長、同じくらい)
そこに突っ込んでくる自転車。ハッとした表情の司。
波留「危ないっ」
波留の手が司の肩を抱き寄せる。彼の胸に包まれる司。司の胸がドクンと鳴る。
司(あれ? 波留ってこんなに力強かったっけ? 背もいつの間にか私と変わらなくなってる?)
おそるおそる波留を見あげる司。ふっと大人っぽい笑みを見せる波留。
波留「平気?」
司「う、うん。なんか変だね。ナイト役がいつもと逆になってる」※気まずそうに顔を背ける
司(いつも……かわいい波留を守るのは私の役目だったのに)
子供時代の回想。大型犬から波留を守ったり、怪我した波留をおんぶする司のシーン。
波留は司の顎に手をかけ、まるでキスするように顔を近づける。
波留「言ったでしょ。ナイト役はもう交代だって」
いつもクールな司の顔が真っ赤に染まる。※アップでかわいい感じに
司モノローグ『一六歳、かわいすぎる幼なじみが溺愛狼に変身しました』
狼になった波留のデフォルメ絵。

〇波留宅のキッチン・朝
オシャレなインテリアのマンションの部屋。カウンターキッチン。
綺麗に焼けた玉子焼きに満足する司。
司「ふぅ。我ながらいい出来」「あ、お醤油が切れかけてるな。買ってこなきゃ」
司(なんて我が物顔でキッチンを使っているけど、ここは私の家じゃない。幼なじみの波留の家だ)
マンションのドアの絵。左は波留家、右が司家。隣同士であることを示す。
リビングの扉が開いて、寝ぼけ顔の波留が入ってくる。トイプードルみたいなふわふわ髪で、ショートヘアでキリっと男顔の司よりよほど美少女。
波留「おはよぉ、司」※とびきりかわいい笑み
司「おはよう。さ、五分で寝癖を直して十分で朝ごはんを終えてね」※司はクール
波留「ふあ~い」
そこに飛び込んでくる波留の母、茜。キャリアウーマンなのでいつもビシッとしたスーツ姿。
茜「わぁ、今日も司ちゃんの玉子焼きおいしそう! ひとつもらうね~」
司が皿に盛った玉子焼きを茜はパクっと口に放り込む。

〇ふたりの過去回想
司モノ『波留の両親は離婚していて、小さい頃からママとふたり暮らし』
小学生司「ひとりなの? じゃあ、うちでご飯食べる?」※服装も男の子っぽく美少年
小学生波留「……うん」※髪長めで女の子っぽい
司ママにご飯を作ってもらうふたりのコマ。
司モノ『茜さんは多忙な人なので、波留はうちで過ごすことがデフォになり……病弱で生活力皆無な波留のお世話は私の仕事になった』
熱を出す波留の世話をする司。

〇現在に戻る
司「ほら、波留。急いで」
司は半分寝かけている波留の背を押し、リビングから洗面台に向かわせようとする。その姿を見て茜はクスクス笑う。
茜「波留は司ちゃんなしじゃ生きていけないね~。いっそお嫁さんにしてもらったら?」
司の脳裏にウェディングドレス姿の波留がポンと浮かぶ。
司(絶対、間違いなく、私より似合う)
波留「いいね、それ。司のタキシード姿、かっこいいだろうなぁ」
タキシード姿の司の絵。
司「馬鹿なこと言ってないで。準備!」
波留はニヤリと小悪魔な笑みを浮かべる。
波留「――ま、どっちがお嫁さんでもいいんだけどね」※このつぶやきは司には聞こえていない。

〇学校の教室、昼。
司を中心に群がる女子たち
女子「司! この問題わかる?」
司「あぁ、それはねーー」
・教科書に視線を落とす司。どの角度から見てもイケメン。女子のため息がこぼれる。
女子「なるほど~。さっすが司! 教え方も上手」
司「リカちゃんの飲みこみが早いんだよ。最近、苦手な数学もがんばってて偉いね」
司の笑顔にときめく女子たち。
女子「司王子が最高すぎて、並みの男じゃときめかない体質になってる気がする」
女子「わかる~! ルックス最強、成績優秀、剣道全国大会準優勝。女子の理想すぎるもん」
それを遠巻きに見ている男子たちと波留
男子「今日も死ぬほどモテてるな、古東さん」
男子「うちの学園の王子だもん。まぁ、男の俺らの目から見ても……」
じっと司を見る男子たち。169センチの長身に長い手足。サラサラの黒髪ショートヘア。
切れ長の目。
女子「きゃっ」
司「大丈夫?」
転びかけた女子を颯爽と助ける司。女子のキャ~という歓声。
男子「文句なしにかっこいい。勝ち目ゼロ」
男子「スカートはいてるのに1ミリも女子に見えないの、謎だよな」※目をこすりながら
冷めた目で彼らを見ている波留。と一緒にいるつっちー&胡桃
 つっちー:波留の親友。サッカー部の爽やか少年。
 胡桃:司の親友でつっちーの彼女。よく喋る元気女子。
波留(司のかわいさがわかんないなんて、馬鹿だなぁ。ま、永遠に馬鹿でいてくれていいけどね)※腹黒い笑顔
つっちーと胡桃は引いた目で波留を見ている。
胡桃「波留くん、またなんか黒いこと考えてるでしょ?」
つっちー「その目、怖いから!」
波留「ぜーんぜん」※ぶりっ子っぽく

〇昇降口付近・下校時間
部活帰りで剣道の胴着姿の司。後輩の女子がキャーキャーしてる。
司「波留~? 着替えてくるからもう少し待ってて」
司(あれ?)
毎日、昇降口前で子犬のように司を待っている波留の姿が今日はない。「忘れ物?」「もしかしてどっかで倒れてる?」と心配になって捜す。
司「あ!」
外にふわふわ髪を発見してそちらに向かう。が、波留は女の子と一緒。ただならぬ気配を察して、慌てて身を隠す司。
後輩の女子「私、絶対に波留先輩の彼女になりたいんです!」
積極的に波留に抱きつく女の子。
司(最近いやにモテてるなぁ。トイプードルそっくりなのに)(また具合悪くなったのかも……って心配して損した)※無意識なイライラ
小柄な彼女といると、波留がすごく『男の子』に見える。
司(あれ、波留ってあんな雰囲気だった?)
モヤモヤする司の心。見たくないのにふたりから目を逸らせない。
波留は彼女を引きはがす。なにか答えを返したようで、目を潤ませる女の子。
女子「どうしても、どうしてもダメですか?」
波留「うん。どうしても無理」※無表情でクールに言い放つ
ホッと安堵してしまう自分に戸惑う司。ブンブンと頭を振りその場から逃げ出す。
司(なんか、私の知っている波留とは別人みたいで……)

〇校門を出たところ
ひとりで先に帰る司。それを追ってくる波留。
波留「司ってば! なんで先に帰るんだよ?」
怒り気味の波留の顔をまともに見られない司。
司「いや、別に。約束とかしてるわけじゃないでしょう?」
波留「俺は約束してるつもりなんだけど! ていうか今朝も心のなかで約束した!」
司「……知らないし」
波留の目線が思っていたより自分と近くなっていることに驚く司。
司(前はもっと……小さくて、私が守ってあげないといけなくて)
中学生くらいの身長差のあったふたりの絵。
司(波留、なんか女の子にもモテてるし。もしかして、私ってもう必要ない?)※胸がズキンと痛む。
波留「どうした? なんかあった?」
司「あのさ、隣同士だからっていつまでも一緒にいるのやめない? 波留、だいぶ健康になったし、もうナイトはいらないでしょう」
波留「俺は司がいないと生きていけないよ?」※かわいい顔で司の顔をのぞき込む。
司「くだらない冗談はいいから」
波留は司の肩をグッとつかみ、おでこがぶつかるほどに近づく。別人のような男っぽい表情。
波留「本気だよ。だからナイト役はもう交代」「司、明日誕生日だよね? 約束……守ってもらうから覚悟しといて」
司(約束?)(ていうか、目の前にいるのは本当に波留なの?)
かわいい波留とかっこいい波留が頭をグルグル回って、司は大混乱。