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会議室は通常の教室よりも少し広いけれど、誰にも使われていない今ガランとした広い空間が寒々しく感じられる。
長テーブルが口の字型に配置されていて、パイプ椅子がズラリと並べられている。
その椅子に足を組んで座ると、小高先生は立ったままで私を見た。
「それで、話って?」
「同じクラスの中西留伊がイジメをしてるから、どうにかして」
自分でも驚くほどにぶっきらぼうな口調になってしまった。
小高先生はその声色に青筋を建てそうに鳴るのをなんとか我慢して「中西留伊ねぇ……」と、呟く。
「あいつ剣道部で後輩をイジメてるんだよ」
「そうか……」
そう言ったきり黙り込んでしまった。
先生はなにも言わないけれど、その気持はなんとなく理解できる。
できれば留伊関連のことでは首を突っ込みたくないのだ。
部活動では優秀な成績を収めているし、教室内ではカーストトップに君臨している。
そんな留伊を怒らせたくないと思うのは先生であっても同じみたいだ。
「ほら、これ」
私はスカートのポケットからスマホを取り出すと動画を再生して見せた。
画面の中で留伊は後輩の背中に竹刀を打ち下ろしている。



