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女子トイレで体操着に着替えた私はどうにか体育の授業に間に合っていた。
すでにウォーミングアップを始めているのは優と涼香だ。
ふたりとも運動バカで、体育の授業に本気を出している。


「今日はバスケットボールを試合形式で行います」


先生の言葉に私の気分は下がっていく。
体育は苦手な科目だし、中でも球技は嫌いだった。
ぶつかると痛いし、うまく投げたりキャッチしたりできない。

それがチーム戦となるとみんなに迷惑をかけることも目に見えていた。
今日の体育は休んだほうがよかったな。
その思いをすぐに打ち消す。

この学校では体育に参加しない生徒は教室で自習をすることになっているから、今日体育を休めば優の机にメモを入れた犯人だとすぐにバレてしまうことになる。
だから、どれだけ嫌でも今日の体育は休めないんだ。

ほんの少し、45分間の我慢だけだ。
それに、自分よりも遥かにとろい人間もいる。
私はボールの準備をしている春菜に視線を向けた。

春菜はその見た目通り運動音痴で、なにをするにしてもビリになることが多かった。
おかげで私が体育で笑われることが少なくて済んでいる。

先生が勝手に決めたチーム決めでは私と優が同じチームになってしまった。
横並びに立つのも嫌な相手と同じチームだなんて気分が滅入る。