不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−

☆☆☆

ふざけんな。
ちゃんと確認せずに鍵を閉めたのはどこのバカだ。
おかげで私は遅刻扱いになったじゃねぇか!

教室へ戻ることができた私は自分の席でイライラと周囲を見回す。
みんな、友人たちを固まって楽しそうに会話をしていて誰も私のことなど見ていない。
さっきまで教室にいなかった生徒が教室にいるのに、それにも気がついている様子はない。

私は右手の親指の爪を強く噛んだ。
ガリッと音がして、血の味が口の中に広がる。
苛立ちが強くて痛みは感じなかった。

ガヤガヤとうるさい教室内で、正広だけが文庫本を取り出して静かに読書をしている。
その表情はとても穏やかで、見ているこちらの心も落ち着いてくる。
あぁ……やっぱり正広だけは別世界の人なんだ。

この秩序も常識もなにもないようなクソみたいなA組の教室で、正広だけが特別だ。
正広を見ていると苛立っていた気持ちが徐々に落ち着いてくる。
私にとって正広はまさに精神安定剤と同じ役割をしていた。

できれば正広に気持ちを伝えたい。
告白して、それで付き合うことができればきっと私の人生は大きく変わる。