その姿を見ているだけで胸がときめく。
穏やかな学生生活はどうにか手に入れることができそうだから、次はやっぱり彼氏だろうか。

今の私に決定的に欠けているものは、それだと思う。
私はソースのついた唇をペロリとなめる。

今すぐには無理でも、いつか正広の隣を歩いてみたい。
手をつないで帰ったり、休日に待ち合わせをしてデートをしたり。

それは今までの自分にとって無縁なものだと思っていた。
学校へ来ても誰ともまともに会話しない私にとって、恋愛なんて雲の上の出来事だったから。

でも、今は違う。
誰にも気が付かれていなくても、教室内の変化を作り上げたのはまちがいなく自分自身なのだ。

それは確実に自分の中で自信として蓄積されていっていた。
いつか恋人になった人の隣を歩くことができれば、それこそ自分の理想とする青春そのものだった。

私の視線に気がついたのか、正広がこちらを向いた。
咄嗟に目をふせて見ていないフリをする。

心臓がドキドキと音を立てているのを感じて、顔が熱くなっていく。
こんなんじゃ、自分の気持を悟られるのは時間の問題かもしれない。
私はそう感じたのだった。