「私、自信ないです。高梨君は実績ありますけど、私法学部出身でもないのに。どうしたらいいんですか?」

 「何とかなるよ。大丈夫だ」

 出たよー。そのごまかすような微笑み。課長の得意技。前向き、いや適当なのか、微妙だよね。

 打ち合わせ室を出て、高梨君のところへ。

 こっちを見て、笑ってる。隣の小暮さんは……機嫌悪い。まあ、そうだよね。彼女はこの仕事好きだって前言ってたもん。というか、高梨君のことが好きなんだよね。

 高梨君は同期。小暮さんは私の一個下。

 「よお、早見。よろしくな」

 高梨君は人なつっこい微笑みを向ける。彼はとてもとっつきやすいタイプ。下の子からも上の人からも慕われる。

 「よろしくなのは、こっちだよ。どうしよう、全くもって苦手なんですけど……」

 「そう言うなって。俺も総会以外のことはちんぷんかんぷんだ。お互い助け合ってやっていくしかないな。でも顧問弁護士はいた方がいいって去年も話してたんだ。良かったよ、やっぱりいてくれた方が調べないで済むし、頼りに出来るからさ。しかし、お前が選ばれたのはどうしてなんだろうな?」