悠久の絃

~赤城side~

昨日の夜、全てを話した。


いとちゃんは退院後僕と暮らすこと、
僕がいない日はいとちゃんを気にかけて欲しいこと、
頼ることがこれまで以上に増えるかもしれないこと。



全てを話した後、みんな無言で各々の行動に移ってしまって反応がよく分からない。

そのまま誰も話さず朝を迎え、日勤組は出勤して行った。今日は休みの凑と絢杜はまだ寝てる。


いとちゃんの症例を勉強しておこうと思って、お昼ご飯を食べた後に病院の図書館へ行くことにした。

そのまま当直に入ろう。











うちの病院はかなり大きい。その分診療科も多いから図書館には専門書も置いてある。


必要なページをコピーして勉強スペースに戻る途中、見覚えのある背中があった。
気づかれないように少しづつ近づいて、手首のバンドを見る。


小児科 : ハヤセ イト


やっぱり。なんでここにいるんだろう。


ポンポンっと肩を叩くと驚いたような顔をしてこちらを向いた。そのまま談話スペースまで連れて行く。

「いとちゃん、どうしてここいるの?誰に連れてきてもらった?」


絃「一人で来た。」


一人?どうやって?いとちゃんの身長ではエレベーターのボタンは押せない。それに、なぜ?


「一人で来たの?どうやって来た?」


絃「階段で来た。」


なるほど。誰かが階段の扉を開放してたのか。


「夏とか、夜星先生にここに来ること言った?」


絃「言ってない。」



おっと、まじか。それやばいよ。


「何時くらいにここ来たの?」


絃「んーと、9時くらい。」


「え?今14時だよ?ずっとここにいたの?」


絃「うん。本読んでた。」

やばい。これ今病棟大荒れだろ。とりあえず夏に連絡入れておこう。
いとちゃんはもう少し話を聞いた方が良さそうだ。


「ちょっと待ってね。」


そう言って夏に電話をかけた。個人携帯だから出るか分からないが一か八かでかけた。


慈良「悠!絃ちゃんがいなくなった!今外出て探してるんだけど、悠も手伝って欲しい!」


「夏、落ち着いて。いとちゃんは見つけたよ。」


慈良「うそ!?今どこ?」


「病院の図書館。少し話してから病棟に戻るから、夏もそれをみんなに伝えて病院に戻ってきな。」


慈良「わかった。じゃあまた後で。」



そう言って電話を切った。