聡一朗さんにそんなふうに評価されているんだ、と嬉しく思う反面、私の胸は複雑だった。

彼が提示するのは、つまり利害が一致するだけのギブアンドテイクの関係。
そこに、温もりを感じさせる愛や絆といった感情は微塵も感じられない。

『つまり、契約関係というやつですね』

私がぽそりと言うと、聡一朗さんは一瞬押し黙り、うなずいた。

『そう言われれば否定はできない。だが俺は、けして君を悪いようにはしない』

そう言って、真っ直ぐ見つめてくる瞳に嘘は感じられなかった。

『君ならよいパートナーになってくれる、そう思ったんだ』
『パートナーだなんて……私のような小娘が』
『大丈夫だよ。君の素直さやひたむきさがあれば』
『……』
『俺と結婚してくれるね』

条件は申し分ない。
語学の勉強を何不自由なく続けられるなんて夢のような話だ。

私の人となりを気に入って選んでくれたのもうれしい。誰でもいいというわけではないのだから。

でも、少し寂しかった。

聡一朗さんは私の人間性を気に入ってはくれていても、女性としては見てくれていないのだから……。

それでも、私はうなずいてしまった。