「そういえば、ままごとに付き合わされて、よく王子様役をやらされたよ。絵本の通りに台詞を言わないと怒るんだ。姉さんは怒ると怖くてね、幼い俺は覚えるのに必死だったよ」
「ええ? そんなふうには見えないけれど……」
「ああして写真ではしおらしくしているけれども、姉さんはけっこう勝気な性格でね――」

 聡一朗さんは、お姉さんの思い出話をよく聞かせてくれるようになった。

 そしてその時の顔は笑顔だったり、楽しげだったり、悲しげだったり、悔しそうだったり――色とりどりの表情に溢れていた。

 私はそのことがなによりも嬉しい。

「父さん、母さん、そして姉さん。いろいろあったけれど、みんな分まで俺は幸せになるよ。美良と一緒に」
「どうか、見守っていてください」

 そう最後にもう一度手を合わせると、私たちは手を繋いで墓標を後にした。