そうして、中に収められていた便箋の束に、目を見開いた。

「聡一朗さんが出した、お姉さんへの手紙ですよね」

 ああ、とうなずいて、聡一朗さんは思い出すように指を唇に当てた。

「姉の遺品を整理している時、俺からの手紙だけが見つからなかった。だから俺はてっきり姉さんは俺を恨んでいる、と思ったんだ。自分を犠牲にして好き勝手やっている弟からの手紙など忌々しいと破り捨ててしまったのだろうと。……その時は精神がかなり参っていたからね、そんな考えしか浮かばなかったんだ……」

 目を閉じ、聡一朗さんは絞り出すように続けた。

「あの男――姉の元夫はひどい支配欲の塊でね、姉のあらゆるものを監視し、気に入らなければ所有物まで取り上げるような鬼畜だった。だから、ここに隠したんだな……誰もわからないように鍵を隠して」
「きっと、聡一朗さんからのお手紙が、なによりも大切だったんですね」

 私はそっと気箱を撫でた。
 お姉さんの大切な宝物を、静かに頑なに守ってくれた勤めを労わるように。