美良の部屋のベッドに、抱きかかえたままそっと寝かせる。

 離れようとして、シャツが引っ張られていることに気付いた。
 美良の手が、いつのまにかそれをつかんでいた。

 彼女のあどけない寝顔が、息もかかるほどに近くにある――。

 気付けば、キスしていた。

 甘い香りと、ベーグルのいい匂い。

 理性を奮い立たせて唇を離すものの、突き動かされるようにもう一度押し当ててしまう。

 愛してしまいたい。
 美良のなにもかもを、存分に愛してしまいたい――。

「う……ん」

 美良が微かに眉根を寄せたのを見て、振り切るように唇を離した。
 飢えた動物のように、俺の息は上がっていた。

 美良はまた健やかな寝息を立て始める。
 最後にもう一度だけその果実のように濡れた唇を啄むと、シャツを握る彼女の手を握り、身を離した。

 そして、丹念に守るようにブランケットを掛けて、部屋を出て行った。