ワインとチーズとバレエと教授


東京上野文化会館はよくバレエの演目が
行われる。

理緒は、今、バレエに打ち込んでいる。
バレエ教室の講師は、かなり厳しいらしい。

5年前、理緒を引き取ったときかなり痩せていた。今も、細いが、筋肉がつき、身体は引き締まっている。

二人はチケットで指定された座先に座り
開演を待った。

照明が暗くなりオーケストラの演奏が始まった。

その瞬間、理緒は

「すごくいい出だし…」

と、つぶやいた。

そもそも、理緒はオーケストラで
第2バイオリンをひいたいた。

今日も、美しいピンクの
フォーマルワンピースを身に着け
白のハイヒールにネイルがほどこされた指先。

相変わらず美しいサラサラしたストレートの黒髪を
バレエレッスンのときのように後ろで束ね、
パールの髪飾りで留めていた。

それは、気品と育ちの良さまで感じる。

バレエをやりだしてから
理緒の肉体はみるみる変化した。

首が細く長くなり、肩が下がり
鎖骨がクッキリ浮き出て姿勢が良くなった。

足は、より細くなったが、ふくらはぎの筋肉は
物凄い盛り上がりを見せ過酷なレッスンをしているとすぐに分かる。

それでも、顔色一つ変えず、理緒は淡々とバレエに
打ち込んでいるようだ。

亮二は、ロミオとジュリエットの鑑賞より、理緒の事が気になっていた。
理緒は、今、どういう想いで時分といるのかとー。

あっという間に三幕が終わり、会場は盛大な拍手と
何度もスタンディングオーベーションが続いた。

理緒も客席から立ち上がり拍手を送った。

オーケストラとバレエに目が肥えている理緒は、素晴しいと感じなければ立たない。

亮二も、今回のバレエとオーケストラは
素晴しいと感じた。

特にオーケストラの質が良かったことは
素人の亮二でも多少は分かった。
理緒は感激したようで
長い間、拍手を送っていた。