バラ風呂を堪能した理緒は
部屋に用意されたバスローブを着て
部屋からベランダに出て
長崎の夜景を見つめていた。
本人は気づいていないだろうが、
その姿は完全なセレブな
お嬢様の雰囲気だった。
亮二はそんな理緒の姿を
微笑ましく見ていた。
翌日、
チェックアウトのとき
ホテルスタッフが
「ジャグジーは
楽しんで頂けたでしょうか?」
と、理緒に話しかけた。
理緒は、顔を赤くして
「…は、はい、とても、感動しました」
と、ペコっと頭を下げた。
「それは良かったです
奥様が喜んでくださり
我々も嬉しく思います」
奥様ー
亮二と理緒はピクッと
動きを止めた。
スタッフの女性は笑顔のままだ。
亮二は、少し複雑な気持ちになった。
多分、理緒もー
ホテルを後にして、
飛行機で自宅に帰宅した。
理緒はやはり、疲れが出たのか
玄関で座り込んでしまい
亮二が身体を起こして
寝室に連れて行った。
理緒には
体力が圧倒的になかった。
少し歩いただけで
息切れし
そして、疲れて座り込む事が
度々あった。
「ごめんなさい」
という理緒に
「いいんだ、普通に
ゆっくり行こう」
そう亮二は言った。
そう、
「普通にゆっくり行こう」
そう理緒に言ったはずなのに、
いつからだろう…
亮二と理緒の歯車は
少しずつ、
きしみだしていた。

