ワインとチーズとバレエと教授


帰宅し、マンションの留守番電話が点滅していた。
ボタンを押すと、母親からだった。

「誠一郎、さっきはごめんなさい、お母さんが悪かったわ、誠一郎がずっと、そんなふうに思っていただなんて…今、お父さんも大変だし…
もう一度、家に来て話し合わない?

お母さんね、色々、誠一郎のことを思って…
聞いてるでしょ、誠一郎?…誠一郎、42歳のお誕生日おめでとう…」

誠一郎はその電話を無視した。

そして家にあったビールを煽るように飲んだ。
ネクタイを乱暴に解きスーツを脱いだ。

首にはしっかり、父親に閉められた跡が残っている。誠一郎はまだ飲みかけのビールの缶を思いっきり床に叩き潰した。

もうどうでもいいー

こんな人生どうでもいいー
そう思ってソファに倒れ込んだ。