ワインとチーズとバレエと教授

よろめいた誠一郎は、そのまま床に倒れた。

その誠一郎の上に、馬乗りになった父親は誠一郎の首を締め
「なんだあの論文は!お前を教授にさせようと思ったのに!なんてザマだ!」

「…父さん… だから…俺は…もう教授になって…父さんの後を引き継いで…」

「何が父さんの後を引き継いだだ!お前なんか助手のままだ!あぁー、ダメだダメだダメだ!」

そして、よりいっそう強く、誠一郎の首を絞めた。

「教授になれ…教授になれ… 教授になれ…」

呪文のような父親の声と共に、誠一郎の首を締める父親の手は、赤黒い血管が浮き出るほど、どんどん強くなり、誠一郎の首に喰い込んで行く。

誠一郎は、もうどうでもよくなったー

このまま死んだ方が楽なのかもしれない…
父親もアルツハイマーだ、それで息子を殺したとしても誰も文句は言わないだろう…

もう、疲れた…
もう、これで終わらせよう…

父親のギラギラした目から殺意が見えた。

誠一郎は、薄れゆく意識の中でツーっと、一筋の涙が流れた。

「…父さん…ごめんなさ…」

誠一郎は死を覚悟した。その時、父親は、ハッとしたように誠一郎を締め付けていた手を急いで離した。

父親は、驚いた顔で自分の手のひらを見て呆然としている。

誠一郎も、ハッとして父親を見つめた。
そして何かを期待したー

「…母さん、食事にしよう」

父親は、スッと立ち上がりスタスタ2階へ上がって行ってしまった。母親は ワーッと泣き叫んだ。