「…あなた、本当にちゃんと食べてますか?」
「だからこうやって作ってるじゃありませんか」
理緒も誠一郎の前で一緒に野菜スープを飲む。
「…本当は、起き上がれないんじゃないのですか?」
「そんなことありません」
理緒が微笑みながら言う。
「私は、あなたのことになると、とても心配なのです…あなたのことを考えると…もし、あなたに何かあると思うと、正気じゃいられなくなる…
今日も、あなたで頭がいっぱいでした
こんなことは初めてです。
年甲斐もないかもしれませんが、あなたのことが心配です」
そして誠一郎はぎゅっと理緒を抱きしめた。
そこから、かすかに、消毒液の匂いがした。
理緒はそのまま誠一郎を抱きしめた。
「大丈夫です先生、私は大丈夫です、
安心してください、先生が後ろめたい事をしているなんて思っていませんし、今日、不機嫌になった理由も分かりました、私は何も気にしていません。
早く帰ろうと思ったのは先生と早苗さんに気を遣わせたくなかったからです」
やはり理緒は、察しがいい。
「…もしご迷惑でなければ、今度、誠一郎さんに、何か作って差し上げたいのですが…今日はちょっと疲れてしまって凝ったお料理が作れませんが…」
「いいのです、あなたがちゃんと食べてくれさえすれば…」
理緒が疲れていそうなので、誠一郎は長居せずに帰ろうとした。
理緒も、その方が良さそうだ。
理緒の顔が見れて良かったと誠一郎は思ったが、同時に、名残惜しい気持ちになる。
理緒が
「また家に遊びに来てください。狭い部屋ですが…」
そういう理緒は健気で可愛らしく見えた。
あのインスタのセレブリティの生活とは、かけ離れているが、これが本来の理緒の生活なのだろうと思った。
誠一郎は、今の理緒の部屋を見て、どこか安心した。そして、玄関に向かい
「あなたのことを、心から愛しています」
そう言って、誠一郎は理緒の頬にキスをした。
「私もです、わざわざ、ありがとうございます」
理緒が玄関先で頭を下げた。誠一郎の誠実さが嬉しかった。そして誠一郎は帰っていった。
理緒は、それだけで胸がいっぱいだった。

