ワインとチーズとバレエと教授


誠一郎はとにかく、理緒を部屋に入れ、空調を最大限、暑くした。

「大丈夫ですか…?」

「えぇ…」

「連絡せず申し訳ありませんでした。駅から急いで走ったのですが、LINEをする時間がもったいなくて…申し訳ないです」

20分程度の遅刻なら、理緒なら、先にワインでも飲んでいるかと思ったが、その予想に反して、理緒は極端な行動を取った。

「もう、会えないかと思ったの…」

「そんなわけないでしょ」

「…もう、来ないかと」

「そんなこと、ありえません」

「…私の中では何度もあったの…」

「え…?」

何のことを言っている?
誠一郎が遅刻したことは一度もないし、会えない恐怖を与えたことなど…と思ったとき、ハッとした。

幼少期の話をしているのか。

誠一郎は、静かに理緒を抱きしめた。
「私はそんなことはしません」
部屋の中が一瞬光り、雷がなった。