「…先生…」
「遅れて申し訳ない、ホテルに行く前に、病院に寄っていたら、入院患者の状態が悪化したもので…
LINEを打つ暇がもったいなく、走ったのですが…」
「……そう…だったの…」
理緒がようやくホっとした。生きた心地がしなかった。誠一郎が何事もなくて良かった。
「あなた、びしょ濡れじゃないですか」
すぐに誠一郎は自分の傘に理緒を入れた。
「良かった…先生が事故にあってなくて…」
「それはこっちのセリフです!交差点に飛び出すだなんて…もう赤になる寸前…」
理緒が誠一郎の胸に顔を当てた。
「……良かった…」
理緒がぐったりしながら、誠一郎にもたれかかった。髪もドレスも雨でびしょ濡れだ。
20分遅れたことが、理緒をそうとう心配させたらしい。こんなことになるなら、一言、メッセージを送ればよかった。
「とりあえず、ホテルへ…このままだと、冷えます」
グイッと理緒を引っ張って、傘の中に入れ、早歩きでホテルへ向かった。
ホテルの試飲会場は賑わっていたが、理緒はそれどころではないらしい。
「あなたは、ここに座っていて」
誠一郎はロビーにある、長椅子に理緒を座らせると、ホテルのフロントに行き、アーリーチェックインが出来るか聞くと、可能との返答で、すぐに部屋を取った。
「さぁ、こっちへ…部屋を取りました。ドレスは、ドライクリーニングに出しましょう。乾きそうにない」
エレベーターの中で誠一郎は早口で言ったが、理緒には聞こえているのか…理緒は青白い顔をして反応がない。

