紹介状には、添え書きに、「当病院の津川先生(外科)の姪様で養女様、礼節保たれる、了解可能、メタ認知やや弱め、黒髪ロング、非常に真面目で素直、メイクはしているが薄く目、口調は穏やかで適切な態度」
と書かれていた。
つまり、一般常識があり、認知能力に問題はなく、あまり、症状は訴えないが、医師から見て非常に好印象な患者ーという意味だ。
理緒が亮二に引き取られてから5年が経つということは現在27歳。誠一郎の新患は毎週月曜と決まっている。
「あと二日後か…」
誠一郎は、本当はボロボロの理緒が訪れるのか、それとも、紹介状や亮二の言う通り、意思疎通が可能で本当にモデルのように美しい理緒が現れるのか全く、見当がつかなかった。
そして、誠一郎は理緒のカルテを見て、何か違和感を感じた。その違和感の正体を探ろうとしても、霧がかかったように掴もうとすると、消えてゆく…
「同期の姪で養女だから、俺も緊張しているのかもしれないな…」
とりあえず、誠一郎が感じた「違和感」は脇に置かれた。そして、誠一郎は、無意識に左手の甲をカリッと搔いた。

