ハッと理緒が顔を上げると、

「ずいぶん早いですね、どうしました?
体調でも悪いのですか?」

そこには、スーツ姿の誠一郎がいた。

「せっ…先生、お疲れ様です」

理緒が立ち上がりペコっと頭を下げた。

「まだ待ち合わせの20分も前ですよ」

「嬉しくて、早めに来てしまって…先生もお早いですね」

「多分、あなたのことだから、早めに来るだろうと思ってましたよ」

誠一郎は涼しい顔で言ったが、理緒は顔が赤くなった。

誠一郎は、少しロビーで待ち、17時30分ごろ、エレベーターで最上階に行こうと思った。

「どうぞ、お座りください…」

突っ立っている理緒に、誠一郎は、コロロ帳の椅子に座るよう促した。誠一郎も隣に座る。

「この度は素敵なレストランをご予約してくださり
ありがとうございます」

「……近場が良いと思いまして」

「お気遣いありがとうございます。
あれから、お忙しかったですか?」

「まぁ、いつも通りです、講義をして診察して、
カンファレンスをして…あれからといっても
まだ4日間しか経っていませんよ?」

「…そうですね…」

誠一郎のデートまで、短いような長いような4日間だった。

二人は他愛のない話をして、あっという間に時間が過ぎた。

「…そろそろ行きますか」

「はい」

ホテルのエレベーターで最上階に上がる。

理緒は誠一郎の全てにドキドキしていた。
エレベーターの中に他のお客がいて良かった。
二人きりなら、どんな態度をしてよいか分からない。

チンー

と、エレベーターのドアが開いた。