ワインとチーズとバレエと教授



ただ、理緒の体調が最近優れなくなったようだ。
理緒が心臓が痛いと訴えたようで亮二は自分が務めるS病院の循環器内科に理緒を受診させた。

ついでに内科も受診させたが、血液検査の結果はやや、栄養失調気味というだけで、とりわけ、悪いデータはなかった。

ただ、彼女は軽度の「異型狭心症」であることが分かった。ストレスや睡眠不足、過換気発作等から心臓の血管が収縮して心臓に痛みを伴う病気だ。

幸い、大事には至らなかったが、循環器内科の医師が亮二に、複雑性PDSDの要因がある限り、また異型狭心症の発作が起きる可能性を示唆し、精神科への受診を強く勧めたという。

「理緒はもう大丈夫ー」

と、亮二が思っていても、理緒が長年受けてきた虐待はそうとうなものかは亮二が一番、分かっている。

そこで、同期で精神科の教授になった誠一郎に、亮二の勤めるS病院の循環器内科から、理緒の紹介状が届いたのだった。