初診でかかった問題の「過集中」も治まった。
今は睡眠薬も抗不安薬も必要としないまでに、回復していた。

誠一郎は、理緒との治療が、終わりを迎えそうだと
感じていた。

それは嬉しくもあり、寂しくもあった。

いつ理緒がそれを切り出して来るか、
誠一郎は見守るしかなかった。

そんなある日、理緒が
外来にやってきた。

相変わらず理緒は美しかった。

「失礼します」

と、軽く会釈をして診察に入ってきた理緒は、
白のブラウスに、ピンクのスカートで、
内科で助言された通りハイヒールをやめて、
底の低い靴に変えていた。

それでも品があり、ツヤがある黒髪に、
相変わらず白い肌で、どんぐりのような大きな瞳も
薄いメイクでも、十分目立っていた。

「…どうぞ」

誠一郎はパイプ椅子に座るよう理緒を促した。