ワインとチーズとバレエと教授



理緒がヘトヘトになって

「ただいま」

と帰ってきた。

亮二は帰宅した理緒のメイク姿を見て驚いた。

ものすごく濃いメイクが施されているが、それでも、美しかった。これがモデルのメイクか…と
亮二は感心た。

メイクで、これほど理緒が美しくなるとは思わなかった…

そして理緒は洗面所に行き、一生懸命、濃いメイクを落とし、熱いシャワーを浴びた。

その日、理緒はパタッとベッドに倒れ込んで、
死んだように眠った。

翌週、理緒のパソコンに、オートクチュールの撮影の写真が届いた。

亮二がそれを見て驚愕した。
本物のモデルだー
理緒なのに、理緒に見えないー

それは本当に雑誌のモデルをやっている女性のように見えた。
凛とした姿の理緒に、美しい真っ白なオートクチュール姿で、髪をアップにし、美しい指先で
ドレスをつまみカメラ目線で微笑んでる理緒。

ロココ調の椅子にヒジを乗せて、
頬杖をついて微笑んでいる理緒。

真っ赤なカラードレスのすそを掴んで、
階段を歩いている理緒…。

なんて美しいんだー
亮二は思わず目を奪われた。
「すごいぞ理緒!完璧なモデルじゃないか!」
「だから、モデルの仕事をしに会場に行ったのよ」
理緒がクスッと笑った。

そのとき、理緒のスマホが鳴った。

どうやらカメラマンから
LINEが来たようで、

「とても素晴らしい君へ!
ホームページに早速掲載させたい」
とのことだった。

式場のホームページは理緒一色になった。
亮二はそれを誇らしく思った。
理緒は疲れた顔で微笑んでいた。
翌日、亮二は病院で
「すごいぞ!見てくれよ!」
と理緒の写真を外来看護師やスタッフに見せた。
看護師たちはキャーキャー言って騒いだ。
そして医局にいた他の医者も理緒の写真を見せた。

「これはすごい」

「花婿がいないのが残念ですな」

と院長にまで言われ
亮二は鼻高々だった。

理緒は本当に美しく
生まれ変わった。

やっぱりバレエをやらせてよかった。

まさかモデルにまでなるなんて…

挙式場のホームページもみんなに見せたら
歓声があがった。
美しい理緒が、いろんなページに掲載されている。

亮二は本当の娘のように理緒が誇らしかった。

そして、大喜びで帰宅すると
部屋の電気が真っ暗だった。

ベッドを覗き込むと
理緒が死んだように眠っていた。

亮二は、そっとしておこうと思った。

そして、理緒の眠った顔を見て
亮二は一抹の不安を感じた。

が、それを
なかったかのように打ち消した