ワインとチーズとバレエと教授



新婦側が、あきらかに不満そうな顔をしたようだが、誰にも何も言わせないオーラが理緒にはあった。

次はバラ園ー

10メートルも離れたところから、望遠レンズで構えたカメラマンが

「カメラ目線で!もっと腰をねじって!微笑んで!」
「バラをそっと指で触れて!」
「少しうつむいてバラを見下してるかのように!」
と、大声で指示を出した。

理緒は難なくそれに応えた。

カメラマンの要求はどんどん、エスカレートして行ったが、理解はどの要求にでも完璧に応えた。これもバレエをやったいたおかげだ。

次はガラス張りの廊下ー
そして、次はロココ調の部屋。
ロココ椅子に座ると、理緒は優雅にひじを付き
ポーズを決めた。

「…完璧だ…」

カメラマンの声がした。
次は巨大な聖堂。ここで、理緒が表情を変えた。

凛とした目つきに、笑いがなく無機質な表情を作った。

クールで近寄りがたいイメージがここには合うと思った。

カメラマンも同じ事を思っていたが
理緒が素早く理解し、指示する必要がなかった。

長いベールが用意され、巨大な扇風機で
ベールを波立たせ。
何度も
カシャ、カシャ、カシャ、と
シャッター音がなり響いた。

次は長さが半分のベールに取り替え、理緒の顔が半分隠れてレッドカーペットを歩く姿を横から撮影した。

もう撮影から3時間は経過した。
カメラマンは
「ほら、見て、美しい」
と、カメラの映像を理緒に見せた。

「…すごい…私じゃないみたい、
私よりキレイな人になってる…」

「あはは、君が美しいのさ、写真は真実を写すからね」

理緒が少し照れた

そのとき、パシャリー

「そんな表情もいいよ」

一瞬のすきに、緩んだ笑顔を撮られてしまった。
そして、カメラマンが
「予定ではなかったけど、カラードレスも撮りたい…時間と体力どう?」と聞いてきたので、「はい、大丈夫です」と理緒は応えた。

理緒は知っている。
モデルの中でヒエラルキーが一番高いのは
スタイリストとカメラマン。
モデルは一番下だということを。

そしてこんな私に、カメラマンが、カラードレスの撮影まで、依頼してくれたことが、どれだけ名誉なことか。なので、理緒の返事は即答だった。
次に着たドレスは真っ赤なカラードレスだった。

それも同じ場所で撮影を何度も繰り返した。
表情やポーズも変えて、撮影は8時間になった。