「永悟、まさかとは思うが……その子が弥世(やよ)ちゃんか!?」


「あーもう、うるさいな!」




騒然となった車内で口々に責め立てられて、少年は噛みつくように言葉を返す。

サービスエリアに車を止めようと、騒がしく方針が決まる中、少女は眉を下げて少年の手を握った。

少年は座席の方へ向けた顔を隣に戻すと、少女の手を強く強く握り返す。




「だいじょうぶだ。何があっても、絶対にはなさない」


「うん……」




少女は不安そうな表情を緩めて、深く頷いた。


未だ車内は大声が飛び交ったまま。

それでも、硬く繋がれた2人の手を引き離すことは、きっと誰にもできないだろう。




[終]