【短】みやまの花嫁



「弥世はここに引っこしてきたのか?」


「……ううん。でも、もうすぐ移り住む……」


「そっか。ここって山に近い田舎だけどさ、なかなか悪くないぜ。住んでるやつだって、いいやつばっかだし」


「……」


「あ、でもカキの木のじいちゃんはおっかねーかな。モモの木のばあちゃんはやさしいぞ、モモくれるし」




永悟以外にも、人が沢山。

みんな仲良く暮らしてるんだ……。


わたしは左手の串を見下ろして、瓶を傍らに置いてから最後の1個を食べた。




「弥世が住んでるのってどんなとこ? 都会? 変な浴衣着てるけど」


「……」


「おーい?」


「……“着物”だよ」