「いつもゆみがお世話になっています」
と、冗談っぽく挨拶したのは、三年五組の唐澤 瑛二(からさわ えいじ)という、陸上部の部長だった。



「まさかの部長……」
と、寧々様はぼんやりと口を開けっぱなしにしている。



文芸部の部室にやって来た唐沢くんは部室をキョロキョロと見回し、
「へぇー、居心地の良い秘密基地みたい」
と、嬉しそうな顔をした。



ゆみちゃんは唐沢くんにソファーを勧めたけれど、唐沢くんは「大丈夫」と言って、座らなかった。



「それで?聞きたいことって何ですか?」



唐沢くんが私と息吹ちゃんを見る。

息吹ちゃんは、
「時田 千世さんの事件の日、中庭で陸上部はミーティングをしていますよね?」
と、尋ねた。



「あ……、二年生だもんね?友達だったんですか?時田さんと」

「いえ、でも私はクラスメートです。……私達は依頼があって、時田さんの事件のことを調べているんです」