ソフトボール部が片付けを始めて、息吹ちゃんは時計広場から校庭を見つつ、話しかけられそうな人を探していた。

みんな片付けに忙しそうで、とてものんびり話せるような雰囲気じゃない。



「彩葉ちゃん、あの人は?」
と、息吹ちゃんがある人を見つめた。



見てみると、ボールがたくさん入った箱を重たそうに両手で抱えて、時計広場にやって来る大きな体格の女の子がいる。



「あの、すみません」
と、息吹ちゃんが声をかけた。



「はい?」

「私達は文芸部の二年生です。少しお話出来ますか?」



彼女は「文芸部?」と呟き、あからさまに嫌な顔をした。



「あの、急用ですか?これ、片付けないと、先輩達に怒られるんです」

「あ、ごめんなさい」



息吹ちゃんが謝ると、彼女はため息を吐いた。

その態度に、私達ふたりはかすかな恐怖心が芽生えた。



「彩葉ちゃん……」
と、息吹ちゃんが首を振った。



私も頷き、
「あの、すみませんでした」
と、引き下がろうとした時。



「あの、何か用ですか?」
と、近寄って来る人がいた。