「大丈夫だよ、ありがとう」
と言いつつ、息吹ちゃんの表情は固い。



「滝口くんの疑いはひとまず晴れたよね」



そう言った寧々様は、鞄からグミを取り出して、私達にくれる。

グミを受け取り、口の中に入れたら、噛みごたえのある弾力感が心地良かった。

甘い、ぶどうの味。



「……あれ?」



私はまた、自分の中に疑問が浮かぶ。



「なんで北校舎に入って行ったんだろう?」

「えっ、ちょっと、また違和感?やめてよ、滝口くんを疑うのは」



寧々様は眉根を寄せたけれど、息吹ちゃんは身を乗り出し、
「何?」
と、尋ねた。



「大きな音が聞こえた時、滝口くんは北校舎に入って行った。……なんで?」

「犯行現場だからでしょ?」
と、寧々様。



「なんで犯行現場って知ってるの?」

「あっ……」



「みんな、体育館や裏庭の、音が聞こえた方向に様子を見に行っているのに」



私の言葉に、部室内は静まる。