「……死んだって!時田 千世(ときた ちせ)!」



県立第二高校。

朝のショートホームルームの前。

二年三組の教室に走って入って来た水元(みずもと)くんが、青ざめた顔で言った。



廊下側の列の一番後ろの席で、私、藤沢 彩葉(ふじさわ いろは)は黒くて丸い眼鏡の鼻当て部分を指でおさえて、眼鏡のズレを直した。






二年六組の時田 千世さんは、今朝早く。

裏庭で倒れていた。

部活の朝練に来ていた他の生徒が、倒れていた時田さんを発見したらしい。






「嘘……、嘘だぁ、適当なこと言わないでよぉ」



窓際の列、後ろから二つ目の席に座る、堀川(ほりかわ)さんが言う。



「水元の言うことなんか、あたし信じないんだからね」

「はぁ?何だよ、オレが嘘を言ってるって?」

「じゃあ、なんで千世が死んだってわかんの!?」



教室がしんっと静まりかえる。