「愛美!!あんたバイトクビになったって?!」
•••クビではないんだけどなぁ。
「お金どうすんのよ?!今すぐ新しいバイト探してきな!!」
•••嫌だ。と言いたいとこだけど、
バイトはしないと私の生活費が危ないからなぁ...。
「•••はい。」
夜なのに無駄に明るい繁華街を歩いた。
すると後ろから、
「おねえさあーん。高収入バイト、興味なァい?」 腹の立つ 喋り方ね...。
高収入バイト、魅力的だけれど、法に反することはしたくないわ。
「興味ないわ」とスパッと言った
するとその男は顔を茹でたこみたいに赤くして怒鳴ってきた。
「いいから来いって!!!」
私の腕をグイッと引っ張ってきた男。
やっ...!
どうしよう! 柔道とかやってたとはいえ、流石に大の男には敵わない...っ!
どうしようっ
「た、助け...っ」
そう叫びかけた時、後ろから突然グイッと肩を抱き寄せられた。
「お兄さん、ごめんね?この子僕の彼女だからさ、どっかいけよ。」
急に威圧的な声になって、男もびっくりしていた。そしてひぃぃっていいながら逃げていった。
「大丈夫?!」
さっきの優しい声に戻った彼。
次の瞬間私は息を飲んだ。
彼が、見たことの無いくらい、美しい顔をしていたから。
「あの〜?」
戸惑い気味に聞いてきた彼。
「は、はいっ!」
こ、声裏返っちゃった...
ふふっと控えめに笑った彼。
わぁ、笑顔かっこいいなぁ•••。
「え、笑顔かっこいいなんて初めて言われた。ありがとう。」ニコッと笑ってくれた。
てか、え、私声に出ちゃってた?!
は、恥ずかしい///。
「君も、笑ったら可愛いと思うんだけどなぁ。」•••笑う、かぁ
「•••私、笑えないんです。」
あ、なんで言っちゃったんだろう。人に、言ったことなんてなかったのに。
「そっか、なにか理由があるんだよね?大丈夫、」あー、なんか、泣きそう...。
「大丈夫。無理しなくても、良いんだよ。」
背中を優しくさすってくるそいつ。
あぁ、この人なら
ー信用しても。
なんて•••こんなこと考えるなんて
「ねぇ、あなたの名前は?」
私が聞いた。


「ねぇ、あなたの名前は?」
気づいたらそう聞いていた。
もう、誰かとは関わらないって、決めてたのに...。
「あ!自己紹介まだだったね僕、遥斗。鈴木遥斗!」
...いい名前。どこか暖かそうな、優しい名前。
私、何言ってんだろ。
「私は、愛美だよ。朔間愛美。」
私がそう言うと遥斗が
「愛美。可愛い名前だね。君にピッタリだよ。」•••こういうのしれっと言えるの、凄いなぁ。この手段で何人の女の人を落としてきたんだろ。
「愛美はさ、好きなこととかってあるの?」
遥斗はそう聞いてきた。
好きなこと、
「歌うこと、かな。」
私がそう言うと遥斗がピクっと反応したように見えた。
「歌、歌うの好きなんだ。ねぇ、良かったら少しだけ歌ってみてよ。」
寂しい時に歌を1人で歌っていた。歌を歌っている時だけは家の事なんて、忘れることが出来た。でも、人前で歌ったことなんて、ない。
でも、この人になら•••。
「いいよ。」
〜.•♬ この曲は、辛い時にいつも歌ってた曲。
いつでも私の味方をしてくれていた曲。
歌い終わって、遥斗の方を見ると遥斗は何故か口をぽかんと開けていた。
「遥斗?」 私がそう聞くと遥斗はハッとして
「す、凄い!愛美、君には歌の才能がある!実は僕ね、『 starplanet』っていう歌い手グループに入ってるんだ!ねぇ、愛美、君も入らない?」 信じちゃダメだ。 人なんて。
でも、なんでだろう。この人の言葉は、
ー信じることが出来る。
「ねぇ、私の事、裏切らない?」
私が震える声でそう聞いた。
遥斗は二ッと笑ってこういった。
ー裏切らない。いつだって一緒にいるよ。
この人なら、私を助けてくれるかもしれない•••っ