フォーチュンクッキー

「お母さん、これなあに?」

 ピラッとはみ出る紙を掴む、またまだ小さいあたし。

 クリーム色の生地を素早くのばすふわふわしたお母さんを見上げると、頬に少し粉がついていた。


「これは“フォーチュンクッキー”っていってね、占いやお手紙をいれられるのよ」

「すごーいっ」

 あたしの歓喜の声にお母さんはやんわりと笑う。


 あたしもお母さんにつくってあげたい。

 大好きっていいたいんだ。



 ひたすらお母さんの手元をじっとみて、できるだけ覚えようとしていた。

時々、ここはね、って優しく教えてくれて。


 完成したクッキーは、あたしには宝物のように見えた。


杏ちゃんや雛太がたべるきらきら光るようなケーキより、輝いていたんだ。


「未来も選んでごらん?」


 焼きたてを差し出してくれた。


 黒いオーブン皿に転がるクッキー。

一際白いひとつを口に運ぶと、軽い音と一緒に紙がくしゃっと口の中で響いた。


 ちょっと熱かったけど、その温度と共にいつだって覚えてる。



『好きな人と幸せになれる』



 それからずっと大切にしてるあたしのおまもり。

「いつか未来にも大好きな人が現れたとき、ずっと幸せでいられるように」



 甘い香りと一緒にあたしを包んでくれた、お母さんの笑顔。