なんでお祭りってピーヒャラーって音がなるんだろう？


　空には藍色のキャンバスを彩るように、きらびやかな飾りとちょうちんが隙間なく散りばめられていた。

オレンジ色の人工的な光は、自然と心を躍らせる。


「あー！みずあめ!!」


　いつもは二つに結ってる髪も、今夜は一つにまとめあげていた。

その天然のクセ毛が愛らしさをかもしだしている。


　見慣れない浴衣姿で、下駄をカコンカコン鳴らせて小走りになる彼女を目線だけで追いかけた。



「ほら、いってこいよ」


　隣にいるちょっと不機嫌そうな少年にも声をかける。


「…なんなんですか？」

　挑戦的な目をいつも向けてくる、彼女の親友の一人・雛太くん。


　どうもオレのことが気に入らないらしい。

理由は、なんとなく想像がついている。


「チビ助、そそっかしいだろう？」

　笑いかけてやると、雛太くんも気づいたようにため息をついて彼女の後を追う。


　案の定、じゃんけんに勝ったらしくて、追加分をもらおうとして片手の1本目を落としそうになっていた。

追いついた雛太くんが慌ててそれをキャッチした。


　ほっと胸をなでおろすと、無性に笑いがこみ上げる。



「…いいんですか？」


　いつの間にか、オレの背後に立っていた彼女のもう一人の親友・杏ちゃん。

チビ助がそう呼ぶから、オレも自然とそう呼んでいた。