日替わりランチを食べながら温泉の様子を伺っております。 (まだまだやってるんだろうなあ、、、。)
そう思っていると一人のママが温泉から出てきました。 様子からして相当に怒っている様子ね。
 そのママがレストランに入ってきたから思わず身構えましたわよ。 何をするんだろう?
あの茶髪ママの隣で戸惑っていた人ね。 隣のテーブルに落ち着くと突然泣き始めました。
 これってどういうことなんだろう? 「何で私が悪者にされるのよ? みんなでやってたじゃない。」
(あらあら可哀そうねえ。 仲間外れにされたのね? しょうがないわよ。 一緒になって騒いでたんでしょう?) 気の毒そうな顔で見詰めておりますが、、、。
 そのママさん、レスカを飲みながら何かやってます。 でもあたしには関係ないわね。
私は私。 あなたはあなたよね。
 何気に他人ぶる私なのです。 まあ、しょうがないか。
関わってみてもさあ、あれじゃあ私まで悪者にされるわ。 おっかないからねえ、最近のヤンママは。
 レストランを出ると温泉に入る気も失せて駅へ向かいました。 と後ろからバタバタと走ってくる足音が、、、。
振り返る気も無いから歩いているとさっきのママさんたちが猛スピードで追い越していきましたわ。 何が有ったの?
 切符を買ってホームに行くとまたまたママさんたちが集団で話してます。 懲りない人たちねえ。
でもレストランで泣いていたあの人は入っていないようです。 何で?
 「あいつさあ、自分だけいい子になってるのよねえ。」 「お嬢様はあれだから困るわ。」
「そうそう。 温泉行こうって誘っといてさ、、、。」 「都合がいいのよ。 お嬢様って。」
 (あんたらがどうしようもないからでしょう? そんなんでよくもまあ文句を言えるわね。) これじゃあ日本の未来は真っ暗だわ。
入ってきた電車にママさんたちは乗って行きました。 トラブるのも嫌だから私は後の電車で帰るわ。
 そこへさっきのママがとぼとぼと歩いてきました。 「さっきはすいません。 迷惑を掛けてしまって、、、。」
「へ? 何のこと?」 「休憩室で、、、。」
「ああ、あの人たちね。」 「私から温泉に誘ったんですけど、ああなるとは思いませんでした。」
 顔を見ると真面目そうな人ですわ。 私ね、思わず友達になっちゃいました。
「何か有ったらいつでも相談してね。」 そう言ってメアドを教えておいたんです。
 野見山凛子さん。 素直ないい人じゃない。
あんなおとぼけママと一緒にしておくのはもったいないわ。 はーあ疲れた。
 家に帰ってくると狸はもう仕事に出掛けたようですねえ。 安心安心。
そこで私は部屋に籠って一眠り、、、。 と思ったら百合子が帰ってきましたわ。
 「ただいまーーーー。」 「ウグ、、、帰ってきおった。」
「え? 帰っちゃダメだったの?」 「何でもない何でもない。」
「変だなあ。 またいいことしたんでしょう?」 「いいことって何よ?」
「いっつもやってるじゃない。」 「それは無いよ。」
「ふーん。」 百合子は信じられないような顔で部屋に入っていきました。
 起き上がったついでに買い物へ。 スーパーの中を歩いているとさっきのママさんが、、、。
(こいつ、、、。) 茶髪ママのおとぼけに大爆笑していたやつだわ。
 家に帰ってから化粧を塗り直したのね? 香水まで振っちゃって、、、。
確かにさあスタイルもいいし可愛い顔してるから人気も有るだろうなあ。 でもあれじゃあ台無しね。
 そのママさんが選んでいるのはレトルト食品ばかり。 (何だ、こいつ料理しないのか。)
篭いっぱいにレトルト食品を詰め込んでいざレジへ、、、。 (あれじゃあご主人は堪ったもんじゃないなあ。)
 私が呆然としていると凛子さんが通り掛りました。 「あら、美和子さんじゃない。」
その声に振り向くと「広江さんね。 あの人は結婚前からああなんですって。」 「そうなの? 私には考えられないなあ。」
「あの人は大学もトップクラスで卒業したらしいんです。 それで大手の企業に入ったの。 そこの課長さんと結婚したから今は家に居るんだって。」
「うちのたぬきとはえらい違いねえ。」 「ご主人は出張が多くて家に居ないことが多いんですよ。 噂じゃあ大阪に彼女が居るとか、、、。」
「大阪に?」 「そうなんです。 何でも元アイドルだった人だとか、、、。」
「騒がれたら終わりね。」 「だからご主人も相当に警戒してるようですって。」
 「でもさあ、こんなことを喋っちゃっても大丈夫なの?」 「ああ、広江さんはその辺が鈍感だから大丈夫。」
「どういうこと?」 「あまりにも世界が違い過ぎるから一般庶民の気持ちが分からないみたい。」
「そっか。 でも気を付けてね。 鈍感そうに見えて実はって人も多いから。」 「ありがとうございます。」
 凛子さんはカートを押して野菜売り場へ行ってしまった。 私も私で買い物を済ませて家へ、、、。
そこへ車が走ってきた。 振り返るとあのママさんだ。
(何しに来たのかな?) 黙って見ているとママさんはゴミ袋をスーパーのゴミ箱に放り込んでさっさと行ってしまった。
ゴミ箱の隣には『家庭ゴミの投棄はおやめください。』って看板が立っているのに、、、。
(あれじゃあダメねえ。) 溜息を吐いた所に凛子さんが出てきた。
「何か有ったんですか?」 私が黙ってゴミ箱を指差すと、、、。
「またやったんですね?」と寂しそうに言った。
 「あの人たちは何も考えてないんですよ。 周りがどう思おうと迷惑しようとお構いなし。」 「そうだろうなあ、あの騒ぎもすごかったから。」
「あれはまだ可愛いほうです。 食べ放題なんかに行くとあんなもんじゃ済みません。」 「そうなの?」
「出禁にされた人も居るくらいですから。」 「どんだけよ?」
 「注意しに来ると怒ったり騒いだりそれはもう、、、。。」 「なんか、それだけじゃ無さそうね。」
「中には「今夜付き合ってあげるから許してよ。」なんて言ってるママさんも居るんです。 マジ?って思いました。」 「信じられないわねえ、抱いたってそんなにいい女が居るとは思えないのに、、、。」
 凛子さんは溜息を吐きながら帰って行きました。 あたしも帰らなきゃ、、、。
すると入れ違いにまたまたママさんが、、、。 (香水きついなあ。)
 道路に出たところで何か声が聞こえましたね。 何だろう?
「ダメなの?」 「そこまできつい香水を付けられると店内が、、、。」
「いいじゃない。 これは私のファッションよ。」 「ですがお店に来られるお客様には迷惑ですから、、、。」
「あのねえ、ファッションは私の自由でしょう? いけないの? そんな法律が何処に有るのよ?」 「ですから、、、。」
 あんなのに絡まれたら店長さんも大変だろうなあ。 南無阿弥陀仏。
気にはなるけど、あんなのに関わってなんかいられないわ。 夕食 夕食。
 帰ってきたら息子君がラジコンを飛ばして遊んでましたわ。 「ワーーーーーオ!」
「お帰りーーーーー。」 そう言いながら私の前に戦闘機を飛ばしてきます。
「危ないなあ。」 「大丈夫だよ。 ぶつからないようにするから。」
「そうじゃなくて、、、。」 「今夜は何?」
 「そうねえ、すき焼きでもしようかな。」 「父さんは可哀そうだね。」
「何で?」 「焼き立てのすき焼き食べれないんだもん。」
「あいつなら焼いて食べるから大丈夫。」 「そうなんだ。」
「何を納得してるのよ?」 「父さんらしいなって。」
「そういうことか。」