沼甘総長は、左手の薬指を独占したい




笑い声を飛ばしながら、姫野と弟は客席からいなくなった。


その時の俺はというと


「お兄ちゃん、絵かけたよ。ジェットコースター乗りに行きたい」


小夜に肩をゆすられても、しばらく立ち上がれなかったんだ。



あの女。

弟を励ますために、ヒーローショーに連れてきてやったのかよ。



『自分の中の「好き」を大事にすればいい』


それを伝えるため、ヒーロー大好き女子になりきるなんて。



普通しないよな?

俺だったらしない。



なんか……

尊敬かも……




脳に何度も再生されてしまう、姫野の笑顔。


弟に向けた、優しいお姉さんスマイル。

真ん丸な瞳が見えなくなるくらい、ニコニコって。



その時、客席に座ったままハッとした。


『今の俺、完全に姫野に沼ってる』って。