沼甘総長は、左手の薬指を独占したい





夏の制服に袖を通した私。

胸まで伸びるゆるふわ髪が広がらないよう、丁寧にワックスを練りこむ。


玄関の姿見で全身をチェック。


胸元のリボンも曲がってない。

靴も磨いておいた。

これでOK。


普段の登校時間より、今朝は早めに家を出た。




東条くんは私の隣のクラス。

私自身の教室に入っても、顔を合わせられない。


だから授業が始まる前に東条くんの教室に行って、お礼を伝えたいんだ。

『夏祭り、楽しかったよ。ありがとう』って。


でも言えるかな?


本人を目の前にすると、ドキドキに襲われて。

回れ右して、自分の教室に逃げ帰っちゃいそうな気もするけど。




学校までの道のりを一人歩く。

勝手にニヤついてしまう自分の顔を、ふんわりカールの横髪で隠しながら。