フラットに到着すると、キャブの運転手は運賃とチップの受け取りを拒否した。
 既にフィリップスさんがチップを含めて多めに渡してくれていたらしい。
 そして、私がパピーを抱いているから、ドアの前まで重い氷が入った荷物を運んでくれた。
 そこまでを、運転手にお願いしてくれていたのだ。


 帰宅して直ぐに行ったのは、私のベッドに寝かせる前にパピーの汚れを拭くことだった。
 着ていた服は背中からハサミを入れて、慎重に脱がせた。
 血が固まりだして、傷口にくっついた服がこれ以上パピーを傷付けないように慎重に剥がしていく。

 顔は泥がこびりついたような感じだったが、汚れを落とすと造作は整っていた。
 身体は不思議と汚れていなくて、全身を拭くのは、明日以降にすることにした。
 夢うつつ状態のパピーはされるがままで、前開きの私のシャツを着せて、ベッドへ運んだ。


 体力気力を消耗したのか、ずっと眠っていたパピーは、フィリップスさんが教えてくれた通り夜中に熱を出した。
 しかし帰宅したら直ぐに傷口を消毒して薬を塗り込んで、1錠の半分弱の鎮痛剤を飲ませるように言われていたので、それほど高熱にはならなかった。
 額に手を当てると、じんわり熱さを感じるくらい。