ここではサイモンの用事を聞いて、速やかに撤収して貰おう。


「あのね、一昨日お兄ちゃん誕生日だったの。
 それでね、お祝いのケーキをどこか食べに行こう、って、ジェンお姉ちゃんを誘いに来たのよ」


 ジェン?
 デイビス兄妹の間では、私はジェンになってるの?
 これも前回の、来年の秋より時期が早い。
 もしかして、何かが狂い始めているの?


「クララ、今日はふたりだけで行こうか。
 ジェンお姉ちゃんはお友達と一緒だし」

 この場に、特にモニカとは一緒に居たくないのだろう、サイモンがクララを抱き直して、帰ろうとした。
 そうだった、一昨日の11月20日にはサイモンの誕生日があって……

 祖父には伝えて……いなかった?
 週末の24日にはお祝いをしようと、祖父と話していたはずなのに、贈り物もまだ買っていない。
 


「あ、あの、夜また、電話します。
 お誕生日おめでとうございま……」




 せっかく誘いに来てくれたのに、申しわけないけれど。
 このままモニカと同席はまず過ぎる。
 それが分かっていて素直に帰ってくれそうなサイモンに、おめでとうと言いかけて。
 
 そこにまた。

 背後から新たな声がかけられて。


「ジェラルディン・キャンベル?
 ねぇ、ディナ!」



 ディナ?
 ディナ!

 私をそう呼ぶのは、ひとりだけ……