さっき、私はお茶を取りに出た時、母に隣の当主の部屋で話を聞いていて、と頼んでいた。


「無断で、ごめ……」


 モニカに、無断でごめんなさい、と最後まで言えない内に。
 モニカが隣との微かに開けられていた内扉を開いて、向こうの部屋へ飛び込んで行った。



 匂わせについて、詳しくモニカは話さなかったけれど、見逃すことにした。
 だって、誰だって全部をさらけ出せないものね?
 それは私も同じだから。



 モニカに劣等感をずっと抱えていた。
 容姿じゃ絶対に勝てない。
 年頃になっても、手芸や料理は思う通りには作れない。


 妬む気持ちを切り替えようと思った。
 料理なんか出来なくても、料理人が作ったものを食べて、持ち帰って。
 それで解決出来るから、と。


 だったら勉強して、働いて、稼いで。
 センスの良い服を着て、流行りのメイクで新しい時代の女を気取る。


 私はそうなるんだ、と切り替えた。

 モニカみたいな古い価値観に縛られない、と……



 ……こんな私を、ひとには話せないから。