「そのままムーアで働きたいと希望する子もいるでしょう。
 お祖父様にどうか……どうか、よろしくお願いいたします、とお伝えくださいませ」


 頭を深く下げられて、こちらが焦ってしまう。
 私はただ提案しただけだ。
 子供達のために実働してくれるのは大人だ。



「詳細は奥様と決めていきます。
 お嬢様にはお礼を申し上げたかったのです」


 先月にサーラさんが母とこのことについて話していたのなら、おそらく母からも祖父は頼まれていたのに、私には何も言わなかった。
 だけど、けじめとして、改めて私からお願いしようと思った。



 それから、先月と同様にリネン班に混ぜて貰って、ベッドメイキングに勤しんだ。
 マーサは、気分が悪いと医務室でふて寝をしていた。
 さすが仮の従姉妹同士、モニカと拗ね方が同じだ。


 夕食の下拵えについて、サーラさんにこちらから打診をすると、有耶無耶な返事をされた。
 料理を教えてと頼んだ時のシェフの反応と同じ……
 これは母から私の料理の腕を聞かされている?



 先月、私は卵料理制覇の第1歩として茹で玉子を、時計を睨み付けながら攻略したのに。

 堅茹で、半熟、腕時計さえあれば、どこでだって自在に出来る。