「やはり、顔出しなんてするのではなかったわ。
 きっと、お菓子教室だって嫌なのよ……」

 母がハント嬢達と約束したお菓子教室を止めよう、と言い出した。
 これはいい機会だと思った。


 モニカの部屋の前を通り過ぎ、廊下の角を曲がって、ふたりで母の部屋に入る。
 この時も母は心配してモニカの部屋のドアをノックして声をかけようとしていたので、それを止めた。


「どうして、そこまでモニカの機嫌を気にするんですか?」

 部屋に入るなり、母に尋ねた。
 言わずに済めば、どれ程良かったか。
 この邸に歪みが出来たのは、母が決めて父が了承したからだ、と。


 メイド長のカルディナには、お茶等持ってこなくていい、と伝えていた。
 ここには母と私だけ。



 隣の部屋には父が居るかもしれないが、聞こえて様子を見に来るなら、来ればいい。
 反対側はリアンの部屋だ。
 あの子には、姉が母を責めている場面は見せたくないけれど……
 そして、リアンの隣に私の部屋がある。

 どうして前回は気付かなかったのだろう。
 こんな部屋割りはおかしい、と。


「機嫌を気にする、なんて……そんな言い方しなくても。
 ただ、嫌がることをしたくないだけよ」

「嫌だ、ってモニカが言ったんですか?
 顔出しして欲しくなかった、って文句を言われましたか?」