週明け早々に、選択科目の授業が始まった。
 オルも時戻しをさせるなら、入学式前に戻して欲しかった。

 そうしてくれたら、私はシドニーとの接点をひとつでも減らすために、外国語の選択を帝国語にしなかったのに!
 私は既にこの言語を習得していたのに、少しでも楽をしたくて選択していたのだ。


 ……そして、その1回目の授業開始前に、1時限前に同じ席についていたシドニーと顔を合わせて。
 金髪碧眼の王子様の容姿と、都会育ちのクールな格好良さに惹かれてしまったのだった。
 ただただ黒歴史である。


 その黒歴史が始まった日は、私の記憶では今日だった。
 帝国語は席が決められていて、仕方なく前回と同じ席に座った。
 机の中を探ると、やはりシドニーのハンカチが忘れられていた。


 前回はハンカチに刺繍されたガタガタの花が可愛くて、まさか男性の持ち物だと思わなくて。
 それをまじまじと見ていたら、忘れ物に気付いたシドニーが戻ってきて知り合った、というわけで。
 今回は直接やり取りをしないで済むように、先生に届けようと席を立ったら、残念ながら。

 シドニー・ハイパーがこっちへやって来るのが見えた。
 それに気付いていない振りをして、教壇で名簿を開きかけていた先生に声をかけた。


「どなたか、忘れ物を……」

「それは俺のだ」


 語学クラスの同級生達が席について注目するなかで、シドニーに腕を掴まれた。